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高知地方裁判所 昭和51年(ワ)366号 判決 1978年7月06日

原告

池田久子

被告

白杵賢二

ほか一名

主文

一  被告らは各自原告に対し、金二〇一万三二二四円及び内金一六九万九二二四円に対する昭和五一年一〇月二二日から、内金一一万四〇〇〇円に対する昭和五二年一〇月一八日から各支払払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

(申立)

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金二六一万九〇〇〇円及び内金一九九万九〇〇〇円に対する昭和五一年一〇月二二日から、内金三九万円に対する昭和五二年一〇月一八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言。

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

(主張)

一  原告の請求原因

1  事故

昭和五〇年四月二八日午後四時一五分頃、高知県香美郡野市町母代寺三五三番地一先道路において、被告臼杵が軽四輪貨物自動車を運転南進中、対向北進してきた原告運転の普通貨物自動車に衝突し、その結果、原告が負傷した。

2  責任

(一) 被告臼杵は、右軽四輪貨物自動車の所有者であり、前方不注視の過失により右事故を惹起したものであるから、自賠法三条又は民法七〇九条による損害賠償責任がある。

(二) 被告会社は、被告臼杵の使用者であり、右事故当時同被告が被告会社の業務の執行として運転していたものであるから、民法七一五条一項による損害賠償責任がある。

3  損害

(一) 治療費

原告は治療費として一万〇七〇二円を支出した。

(二) 入院雑費

原告は、三九日間にわたり入院して治療を受け、その間雑費の支出を余儀なくされたが、その額は、一日につき五〇〇円で、合計一万九五〇〇円となる。

(三) 通院交通費

原告は、七七回にわたり通院して治療を受け、その交通費として、一回につき二〇〇円、合計一万五四〇〇円を支出した。

(四) 休業損害

原告は、農業を営み、田五二・一アール、畑九・六アールを耕作し、果樹園四五アールで柿、梅、みかん等の栽培をして、相当の収入をあげていたが、前記受傷のため、一年間にわたり休業を余儀なくされた。それによる損害は、(1)田については、他人を雇傭して従来の約四割の収入をあげたにとどまり、収入減四〇万六〇〇〇円、雇傭賃金支出三五万五一二〇円、(2)畑については、全く耕作できず、八〇万円、(3)果樹園については、その手入れもできず、植栽中の二年生の柿の木三〇アール分が全滅し、少なくとも三〇万円で、合計一八六万一一二〇円となる。

(五) 労働能力喪失による逸失利益

原告は、昭和五一年四月一日、自賠法施行令別表第一四級に相当する前記受傷の後遺症状が固定したから、向う二年間にわたり五パーセントの労働能力を喪失した。これによる逸失利益は、原告が右症状固定時において四四歳であり、同年齢の女子労働者の平均賃金が一か月につき九万五〇〇〇円であるから、その二年分の五パーセントにあたる一一万四〇〇〇円となる。

(六) 慰謝料

原告は、前記受傷のため、約四〇日間にわたり入院し、更に昭和五一年四月一日までの間七七日間にわたり通院して治療することを余儀なくされたのみならず、前記の通り後遺症が残存するなどして、相当の肉体的精神的苦痛を蒙つたが、これに対する慰謝料としては一三〇万円が相当である。

(七) 損害の填補

原告は、本件事故による損害に関し、自賠責保険金九三万一一七八円を受領した。

(八) 弁護士費用

原告は、以上により、右(一)ないし(六)の合計三三二万〇七二二円から(七)の填補額を控除した二三八万九〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て)の支払を被告ら各自に請求し得るところ、被告らが任意に支払わないため、原告代理人に本訴を委任し、その報酬として二三万円を支払うことを約した。

4  本訴請求

よつて、原告は、被告ら各自に対し、右3の(八)の二三八万九〇〇〇円と弁護士費用二三万円との合計二六一万九〇〇〇円、及び、右二三八万九〇〇〇円のうち、一九九万九〇〇〇円に対する損害発生の後である昭和五一年一〇月二二日から、三九万円に対する同じく昭和五二年一〇月一八日から各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実のうち、被告臼杵が運転していた軽四輪貨物自動車が同被告の所有であることは認め、その余は争う。

3  同3の事実のうち、自賠責保険金受領の点及び訴訟委任の点は認め、その余は争う。

(証拠)〔略〕

理由

一  事故

請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

二  責任

1  被告臼杵が運転していた軽四輪貨物自動車が同被告の所有であることは、同被告の認めるところであり、同車の支配管理が同被告以外の者によつて行われていたことの主張立証はないので、同被告は、右自動車の運行供用者として、自賠法三条により原告の蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

2  成立に争いのない乙第二・三号証、同第四号証の一・二・三、被告臼杵、被告会社代表者各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告臼杵は、被告会社に雇われ、タクシーの運転、配車用務及び集金業務に従事していたが、本件事故当時、被告会社の集金業務のため、前記軽四輪貨物自動車を運転進行中、道路右側部分にはみ出したうえ、集金先はどこであろうかなどと考えごとにふけり前方を注視していなかつたことから、対向してきた原告運転の普通貨物自動車に衝突するに至つたことが認められる。従つて、本件事故は、被告会社の被用者である被告臼杵が、被告会社の事業の執行中、過失によつて惹起したものというべきであるから、被告会社は、使用者として、民法七一五条一項により原告の蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  治療費等

証人池田勝一の証言とそれによつて成立の認められる甲第三号証及び同第九号証の一・二・三によれば、原告は、治療費、治療用物品購入費及び診断書料として、合計一万〇七〇二円を支出したことが認められる。

2  入院雑費

右証言とそれによつて成立の認められる甲第二・五号証並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、三九日間にわたり入院して治療を受け、その間雑費の支出を余儀なくされたことが認められるが、その額は、一日につき五〇〇円程度と推定できるから、合計一万九五〇〇円となる。

3  通院交通費

右証言とそれによつて成立の認められる甲第四・五・六号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、バスを利用し或は娘の運転する自動車に乗せてもらつて、七七回にわたり通院したことが認められる。そして、右証言により成立の認められる甲第一〇号証によれば、右バスの料金は片道一〇〇円であることが認められるから、娘の車で通院したことについても同額の費用を要したものと評価して差支えない。従つて、原告の通院交通費は、一回につき二〇〇円(往復分)で、合計一万五四〇〇円となる。

4  休業損害

右証言とそれによつて成立の認められる甲第一一・一二号証、同第一三号証の一ないし一一、同第一四号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、その主張の通り田畑を耕作し果樹を栽培する農業に従事して、相当の収入をあげていたが、前記受傷のため、一年間にわたり休業を余儀なくされたこと、それによる損害は、(一)田(稲作)の関係では、他人を雇傭して従来の約四割の収入をあげたにとどまつたため、収入減が四〇万六〇〇〇円、支払雇傭賃金が二九万〇五〇〇円、(二)畑の関係では、五八万八三〇〇円(ハウスにらの収穫不能分)、(三)果樹園の関係では、原告主張の通り少なくとも三〇万円で、合計一五八万四八〇〇円となることが認められる。なお、右証言によれば、右認定の雇傭賃金のほかに、脱穀調整の賃金として一反につき一万二〇〇〇円を支払つた、というのであるが、同証言の他の部分によると、脱穀調整は以前から他人に請負わせていたことが窺えるので、その賃金の支払が本件事故と因果関係を有するとは認め難く、また、畑の関係で、右にら以外の野菜も収穫不能であつたことが窺えるけれども、その損害額がどの程度であつたかについて確証がないから、休業損害は、右認定の限度にとどまらざるを得ない。

5  労働能力喪失による逸失利益

右証言とそれによつて成立の認められる甲第三ないし八号証、同第一五号証の一・二、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、前記受傷の結果、頭頸部腰部痛、めまい、嘔気が起こるほか、頸椎の運動制限、右上肢の筋力低下、腰椎の前彎減少等の後遺症状が残存し、昭和五一年四月一日右証状が固定したものと診断され(当時原告は四四歳)、以来、十分な仕事ができず、昭和五三年六月当時においても、右症状の一部が残存していること、右後遺症状は、自賠法施行令別表第一四級に相当すると認定されていることが認められる。右事実によると、原告は、少なくとも、昭和五一年四月から昭和五三年三月までの二年間にわたり、五パーセントの労働能力を喪失したものと推定でき、それによる逸失利益は、原告が農業を営みかなりの収入をあげていたことなどに鑑み、その主張の通り一一万四〇〇〇円を下らないものと認めて差支えないと思料される。

6  慰謝料

原告が前記受傷のためかなりの肉体的精神的苦痛を蒙つたことは想象に難くなく、前記認定の入通院期間、後遺症状の残存、本件事故が被告臼杵の一方的過失に起因すること等、本件にあらわれた諸般の事情を考慮すれば、右苦痛に対する慰謝料としては、一〇〇万円が相当であると認める。

7  損害の填補

原告が本件事故による損害に関し自賠責保険金九三万一一七八円を受領したことは、当事者間に争いがない。

8  弁護士費用

原告は、以上により、右1ないし6の合計二七四万四四〇二円から7の填補額を控除した一八一万三二二四円の支払を被告ら各自に請求し得るところ、原告がその代理人に本訴を委任したことは、当事者間に争いがない。そして、本件の事案、審理の経過、右認定の賠償請求権の額等に徴すると、原告が被告らに賠償を求め得べき弁護士費用の額は、二〇万円をもつて相当とする。

四  結論

そうすると、原告の本訴請求は、被告ら各自に対し、右三の8の一八一万三二二四円と二〇万円との合計二〇一万三二二四円と、右一八一万三二二四円のうち、一六九万九二二四円に対する損害発生の後である昭和五一年一〇月二二日から、一一万四〇〇〇円に対する同じく昭和五二年一〇月一八日から各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却すべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 山脇正道)

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